現代人のためのやさしく役立つ『唯識学』入門
−ティク・ナット・ハン作『唯表五十頌』を味わう−
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唯識学は倶舎学とならんで仏教の基礎学として重要な位置を占めているが、往々にして難解で煩瑣な非実用的思弁とみなされて、これまで一般にはほとんど知られることがなかった。しかし、瑜伽(ゆが)行（瞑想）の実践を通して獲得され洗練されてきた、人間についての深い洞察と精緻な心理分析である唯識学は現代に生きるわれわれが学ぶべききわめて多くのものをうちに秘めていると思われる。この仏教の＜体験知＞の伝統を新たな視点から「われわれのための臨床的人間学」として読み直していくことには大きな意義があるのではないだろうか。本セミナーでは、欧米でもっとも敬愛されている仏教指導者の一人であるベトナム人禅僧ティクナットハンが作成した『唯表五十頌』（テキストは漢文と英文の両方を使用）を読み解きながら、唯識の基本を学んでいく。その際、坐禅、止観、ヴィパッサナー、念仏といった仏教の諸修行とのつながりや、認知科学、脳科学、身体論といった他分野における知見との連関なども踏まえて、できる限り広い視野をもってアプローチすることをめざしたい。講師からの一方的講義ではなく参加者諸氏の積極的発言や応答のある生き生きした授業展開を期待している。
講師：藤田一照（１９５４〜 ）
愛媛県生まれ。東京大学大学院教育学研究科教育心理学専攻博士課程中途退学。２９歳で出家し曹洞宗僧侶となる。１９８７年からアメリカ東部にある坐禅堂の住持として渡米、近隣の大学や瞑想センターなどでも坐禅指導や仏教の講義をおこなう。１９９５年には来日したティクナットハン師の通訳をつとめた。２００５年に帰国し現在、葉山在住。訳書に『禅への鍵』、『未来の宗教 空と光明』（以上 春秋社刊）『ダルマの実践』、『フィーリング・ブッダ』（以上 四季社刊）、『自己牢獄を超えて』（コスモス・ライブラリー）がある。
参考書：Thich Nhat Hanh Understanding Our Mind: Fifty Verses on the Nature of Consciousness (Parallax Press) ペーパーバック ２５０ページ Amazon.co.jpで\1762で入手可
ティク・ナット・ハン（釈一行）（１９２６〜 ）
ベトナム出身の禅僧・平和運動家・詩人。ダライ・ラマ14世と並んで、世界でもっとも著名な仏教僧の一人。行動する仏教（社会参画仏教 Engaged Buddhism）の命名者でもある。数多くの著作があるが、邦訳としては『微笑を生きる』、『生けるブッダ、生けるキリスト』、『禅への鍵』、『禅への道』、『小説ブッダ』（以上 春秋社刊）、『仏の教え ビーイングピース』（中公文庫）、『あなたに平和が訪れる禅的生活のすすめ』（アスペクト）などがある。
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